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特別企画展「魅惑の清朝陶磁」

古来、「やきもの」の王者として名高い中国陶磁の中でも、その多様性と色鮮やかさにおいて、群を抜いているのが清時代の陶磁器です。ヨーロッパの王侯貴族や、明治維新後の日本の美術愛好家たちに賞玩(しょうがん)されたことはよく知られていますが、「鎖国」という歴史観の影響もあって、江戸時代の日本へもたらされた清朝陶磁には、これまであまり注意が払われてきませんでした。
しかし、近年「鎖国」の実態の研究が進む中で、江戸時代には既に相当量が輸入され、日本の「やきもの」生産へも大きな影響を与えたことがわかってきています。
この展覧会では、江戸時代の日本人が愛した民窯製品のおおらかさや、近代日本の陶工が好敵手と認めた官窯製品の精巧さを、伝世の名品はもちろんのこと、出土品や沈没船からの引き揚げ品も交えて紹介します。さらに、清朝陶磁に影響されながらも、常に新しいものを生み出そうとした日本の陶工たちの努力の足跡を、彼らの作品を通してたどります。
日中の「やきもの」が織りなす百花繚乱の世界。どうぞご堪能ください。

展示内容

 

長崎港之図

 

 

行き交う唐船

江戸時代の日本は、海外との交流が制限されていました。しかし、長崎へは、オランダ・中国から貿易船が来航し、多いときには毎年数十隻もの唐船が着岸していました。その取引量は、オランダとの交易をはるかに凌ぐものでした。長崎にはオランダ人の居住地・出島よりも遥かに大規模な中国人の居留区・唐人屋敷が設けられ、中国から文物がもたらされていました。


長崎唐人屋敷跡出土清朝陶磁  

出土品が語る〜江戸・京都・長崎〜

中国では、崇禎17年(1644)に内乱で明が滅亡し、王朝が清に交代しましたが、海外交易の利潤を軍資金とした鄭成功一族が中国南部で激しく抵抗したので、清は海外貿易を禁止してしまいました。その間に、日本では磁器生産地として有田が急成長します。
康煕22年(1683)に台湾の鄭氏一族は降服し、翌年には海外貿易が解禁されましたが、日本での中国陶磁器需要は冷え込んでいました。しかし近年、江戸時代の遺跡の発掘調査が進められる中で、相当量の清朝陶磁が中国から輸入されていたことが明らかになってきています。

青花花卉文皿  

日本からの注文

かなりの量がもたらされたとはいえ、江戸時代の日本へ中国の文物の入手経路は限られていました。やはり、中国との貿易の窓口である長崎との直接的な繋がりが、その機会を格段に増やしていました。
長崎にある建仁寺の末寺・春徳寺は、代々住職が輸入漢籍改役として中国貿易に直接関与しており、住友銅吹所では長崎での貿易取引用に棹銅を生産していました。その跡地出土の清朝陶磁は、同時代の日本国内の遺跡では、他に類を見ない出土量を誇っています。
 

青花捻花文鉢  

日本からの注文

日本へもたらされた清朝陶磁の絶対量は、18世紀末頃から特に増加しています。実は、まさにその頃日本人の間で中国へ〈やきもの〉の茶道具を注文することが、ちょっとした流行になっていました。
有田焼をはじめ日本の陶磁器は、清朝陶磁とほとんど同じものを作れるほどに急成長していました。にもかかわらず、わざわざ中国へ発注している背景には、必然性や効率性を越えたところにある、異国文化に対する憧憬の念があるのでしょう。
その際には、かつて盛んに輸入されていた明時代末期の中国陶磁に似たものを、日本人はことさらに好んで注文していました。
 

金琺瑯高足杯
 
 

旧家伝来の清朝陶磁

清朝陶磁は輸入されていたとはいえ、当時使われていた〈やきもの〉全体から見れば、江戸時代の日本へもたらされた量は微々たるものでした。
珍しいゆえに大切にされた清朝陶磁は、江戸時代から続く日本の旧家に少なからず伝えられてきました。
例えば、京都の揚屋の名門である角屋、医学者小石元俊が開いた医学塾・究理堂、塩田王と言われた備前の野ア(“さき”はたつさき)家、さらには尾張徳川家や近衛家など、 旧家が有する清朝陶磁の伝世品は、出土品ではめったにお目にかかれないような作品の宝庫です。

三彩輪花皿 現川焼  

江戸時代の中国趣味

日本の陶工たちも、清朝陶磁の人気ぶり、その意匠の変化には極めて敏感に反応しました。ここでは、清朝陶磁と日本の陶磁器を比較して展示していますが、清朝陶磁の影響が色濃い五彩や三彩による作品や、粉彩の技法に近づけようとした作品など、清朝陶磁に迫る日本の陶工の心意気が伝わってきます。
とりわけ、清朝陶磁の特徴のひとつである粉彩技法の撫子色(ピンク)は、多くの日本人を魅了しました。日本各地の陶工はこれに挑戦し、萬古焼を擁する伊勢の地では、江戸時代のうちにその再現に成功しました。
 

色絵花卉文柑子口瓶 十代今泉今右衛門作  

清朝陶磁と近代日本

「開国」したばかりの近代日本にとって、輸出産業振興策は国策上の大きな課題でした。明治・大正時代の日本の陶工たちは、同時代のヨーロッパの陶磁を強く意識し学びましたが、同時に〈やきもの〉生産大国の清朝の陶磁にも畏敬の念を持っていました。
咸豊年間(1851−61)に太平天国の乱が起きた中国では、国土が疲弊し陶磁器生産も振るわなくなっていたので、近代日本の陶工たちは、同時代よりも康煕・雍正・乾髞N間(1662−1795)といった前時代の清朝陶磁を、越えるべき相手として意識していたようです。
 

五彩浮世絵蓋壺  

影響の双方向性

 

清時代初期に中国陶磁の輸出が途絶えた時、東南アジアからヨーロッパに至るまで、世界市場を席巻したのは「伊万里」と俗称される日本の有田焼でした。
康煕23年(1684)に中国からの輸出が解禁されると、今度は既にヨーロッパで高い評価を得ていた日本の「伊万里」を真似した清朝陶磁がつくられました。大小・強弱はあろうとも、文化の影響は双方向だったのです。

 

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関連イベント

講演会

講演イメージ

 
  時 間 14:00〜15:30
  会 場 1階ホール
  定 員 140名

  参加費 無料

 

 

 

 

 

 

 

 

テーマ 「清朝陶磁と日本人


開催日 2014年1月18日(土)


講 師 尾野善裕氏(京都国立博物館 工芸室長)

 

 

 

テーマ 「憧れと魅惑の中国趣味〜清朝陶磁を取りまく世界〜


開催日 2014年1月19日(日)


講 師 植松有希(当館研究員)

 

 

 

テーマ 「最高級のやきもの!−清朝陶磁入門


開催日 2014年2月9日(日)


講 師 長谷川祥子氏(静嘉堂文庫美術館 主任学芸員)

 

講演会

講演イメージ

 
  時  間 13:00〜17:00
  会  場 1階ホール
  定  員 140名
  参加費 無料

 

 

 

テーマ「清朝陶磁をめぐる日中交渉


日 時 2014年3月1日(土)

プログラム

※「ランタンプレス」(ながさきプレス発行)に掲載のプログラムから講演時間が変更になりましたのでご了承ください。
 

ワークショップ

ろくろ体験

 

 

電動ろくろで陶芸体験

 

電動ろくろを使って現川焼の器を作ります。

 

日 時 2014年2月2日(日)

     10:00〜12:00(小中学生対象)

      14:00〜15:30(高校生以上・成人対象)

場 所 伝統工芸体験工房

定 員 各回6名

参加費 1000円(完成品を郵送希望の場合は要別途送料)


協力 長崎陶芸復興塾
※12月25日以降電話で受付。先着順。

 

おはなし会

 

 

はくぶつかんのおはなし会「やきもののおはなし」

 

「やきもの」がでてくるおはなしの読み聞かせと、ぬりえを行います。

 

日 時 1月11日(土)10:30〜11:00

場 所 2階立山亭

対 象 幼児〜小学校低学年

※参加費無料・要事前申込。

 

ぬりえイメージ

 

 

とうじきぬりえ

 

お正月期間及び会期中の土日祝日は、当館オリジナルの「とうじきぬりえ」をお楽しみいただけます。

 

日 時 2014年1月1日〜5日(日)及び会期中の土日祝日

場 所 3階ロビー

対 象 幼児〜小学校低学年

※参加費無料

 

イベント

煎茶の楽しみ

 

 

煎茶の楽しみ

 

江戸時代に中国から長崎に伝えられ、文人趣味とともに発展した煎茶。現在長崎で受け継がれている文人流の煎茶をお楽しみください。

 

日 時 2014年1月25日(土)
     13:00〜、13:30〜、14:00〜、14:30〜、15:30〜

場 所 1階エントランスホール

茶 券 500円(「魅惑の清朝陶磁」展とのセット券1,400円)
     ※茶券は当館にて販売

定 員 各回20名

協 力 文人流知足会

 

明清楽イメージ

 

 

明清楽の演奏

 

江戸時代に長崎に伝わった明清楽。月琴を中心とした中国古楽器による合奏をお楽しみください。

 

日 時 2014年2月9日(日)
     13:30〜14:00、15:30〜16:00

場 所 1階エントランスホール

協 力 長崎明清楽保存会

※観覧無料

 

   

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アクセスマップ

会  場 長崎歴史文化博物館 (〒850-0007 長崎市立山1−1−1) 3階企画展示室
会  期 2013年12月28日(土)〜2014年3月3日(月)

開館時間 【平日】 9:00〜18:00 (最終入館17:30)
       【12月30日〜1月3日】 10:00〜18:00 (最終入館17:30)
       【土日祝・1月31日〜2月14日】 8:30〜19:00 (最終入館18:30)

休館日   1月21日(火)、2月18日(火)
料  金 一般 1,200円(900円) 高校生以下無料
*( )内は前売・及び15名以上の団体、身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳持参者料金
*長崎れきぶん友の会会員は無料
お問合せ 電話 095-818-8366

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