1866年8月25日(慶応2)、日本とイタリア間で修好通商条約が締結され国交を樹立し、今年で150周年を迎えます。しかし両国民の最初の文化的な交流は今から400年ほど前にさかのぼります。それは、ドメニコ・ティントレットによって描かれた伊東マンショの肖像画が、2014年にミラノのトリヴルツィオ財団のコレクションの中から発見されたことからも証明されるでしょう。
イエズス会巡察師ヴァリニャーノによって計画され、1582年(天正10)に、九州の3人のキリシタン大名の名代として、伊東マンショら4人の少年を中心とする天正遣欧少年使節が日本からヨーロッパに派遣されました。数々の苦難を乗り越え、1585年3月23日に、ルネサンス期のローマに到着し、ローマ教皇グレゴリオ13世に謁見を果たしました。またこのローマ訪問の前後には、イタリア、スペインの各地で盛大に歓迎されたことでも知られています。この新たに発見された伊東マンショ肖像画は、まさに1585年にヴェネツィア共和国にて天正遣欧少年使節が公式に歓待された事実を裏付ける歴史的な大発見であったのです。
この天正遣欧少年使節の正使を務めた伊東マンショ(1569頃‐1612)の肖像画が、このたび所蔵者であるトリヴルツィオ財団のご協力により、日伊国交樹立150年を記念し、東京と、使節団が1582年に出航した長崎と、伊東マンショの生まれ故郷である宮崎の3箇所で世界初公開をされることになりました。
長崎会場では、この新たに発見された油彩画の伊東マンショ肖像画を公開するとともに、天正遣欧少年使節をめぐる関連資料などをあわせてご紹介します。


世界初公開 伊東マンショ肖像画 ドメニコ・ティントレット作 1585年 ミラノ、トリブルツィオ財団蔵


 

2009年、ミラノのトリヴルツィオ財団が、コレクション中の東洋風の青年が描かれた肖像画を調べたところ、カンヴァス裏面に「Mansio」、そして「1585年」と記されていることが確認されました。以降、このことを手がかりとして約5年の歳月をかけて調査研究が進められ、この肖像画が天正遣欧少年使節の正使伊東マンショを描いたものであることが発表され、日本にも2014年に「伊東マンショ肖像画発見」のニュースが報道されました。

実は、この肖像画は、ヴェネツィアの画家ヤコポ・ティントレット(1519-94)が、ヴェネツィア共和国評議会より制作を受注したことが文献に記録されており、長らくキリシタン史研究者たちの間で探し求められていた作品だったのです。
そして、ヤコポの死によって肖像画家として名高い息子のドメニコ・ティントレット(1560-1635)が完成させたといわれています。
ローマ滞在後の天正遣欧少年使節がヴェネツィア共和国を訪問した(1585年)のを記念して、当初4少年の像を描くことが計画されましたが、伊東マンショ一人のみの完成となりました。
またX線撮影によって、服装も少年らが遣欧された1580年代に流行のものからドメニコ活躍期の17世紀初頭の流行の大きな襟等に描き変えられたことがわかりました。
また、、画面向かって左上には、カンヴァス裏面と同じ文章が一部欠損した状態で記載されていることから、当初は現在よりもやや大きな作品として制作されていたことも推測されています。
肖像画の伝来についても調査が進められ、ティントレットの工房から、複数の蒐集家の所蔵を経て、現在のトリヴルツィオ家の所有となるに到るまでの歴代の所有者が明らかになりました。


◎天正遣欧少年使節と伊東マンショ


天正遣欧少年使節と伊東マンショ

 


新たに発見され、初めて公開される油彩画の《伊東マンショ肖像画》と、2005年にローマで発見された当館所蔵の《伊東マンショ肖像画》。イタリアで描かれた2つの肖像画が、時を超えて一堂に会します。

◎キリスト教伝来とヨーロッパとの交流


キリスト教伝来とヨーロッパとの交流

 


大航海時代、東西の文化の架け橋となったキリスト教の布教、そして少年たちが学んだイエズス会のセミナリオなど「天正遣欧少年使節」を生み出した背景を紹介。

講演会情報

 


長崎学特別講演会「江戸時代の世俗秩序と潜伏キリシタン」

 日時: 2016年7月23日(土)14:00〜15:30

 講師: 大橋幸泰(早稲田大学教授)

 会場: 1階ホール

 定員: 140名

 ※聴講無料、事前申込み不要


長崎学講座スタンダード「天正遣欧少年使節をめぐる諸相」

 日時: 2016年8月27日(土)14:00〜15:30

 講師: 滝澤修身(長崎純心大学教授)

 会場: 1階ホール

 定員: 140名

 ※聴講無料、事前申込み不要

展示解説

 


本展の見どころを当館研究員がわかりやすく説明します。

 日時: 会期中の土日祝日 14:00〜

 ※講演会開催時を除く

 場所: 2階美術展示室

 料金: 常設展観覧料が必要です

 解説: 当館研究員

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会  場 長崎歴史文化博物館 (〒850-0007 長崎市立山1−1−1) 2階美術展示室
会  期

2016年7月22日(金)〜8月31日(水)

開館時間 8:30〜19:00(最終入館18:30)

休館日   なし

料  金 常設展観覧料でご覧いただけます

 大人600円 小中高生300円 ※長崎県内の小中学生は無料
主  催 文化庁、「新発見!天正遣欧少年使節 伊東マンショの肖像」展長崎会場実行委員会(長崎県、長崎市、長崎歴史文化博物館)、読売新聞社
特別協力 イタリア大使館
協  力 アリタリア‐イタリア航空、カトリック長崎大司教区
特別協賛 長崎バス
協  賛 十八銀行、親和銀行、エフエム長崎
後  援 長崎県教育委員会、長崎市教育委員会、佐世保市、佐世保市教育委員会、諫早市、諫早市教育委員会、大村市、大村市教育委員会、平戸市、平戸市教育委員会、五島市、五島市教育委員会、西海市、西海市教育委員会、雲仙市、雲仙市教育委員会、南島原市、南島原市教育委員会、波佐見町、波佐見町教育委員会、小値賀町、小値賀町教育委員会、新上五島町、新上五島町教育委員会、長崎日伊協会、長崎県宗教者懇話会、長ア純心大学、KTNテレビ長崎、NIB長崎国際テレビ、NCC長崎文化放送、NBC長崎放送、NHK長崎放送局、長崎ケーブルメディア
 

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